個人の意見を超えた最適解とは?

日常

 政治の世界に新しいい民主主義を提唱してくれている良書にであった。「一般意思2.0 東浩紀著 」である。ジャン・ロック・ルソーの社会契約説をもとにした考えを展開しており、一般意思という考えを現代風にアレンジして実際に今後の政治に反映させるビジョンを語ってくれている。

 一般意思という概念はどういうものなのか、具体的にどんなビジョンが語られてるか解説していく。また、私達の生活にどう役立てていくか自分なりに考えてみた。

一般意思とは?

 そもそも一般意思とはルソーが提案したもので、私達一般市民の考えを反映させた集合体のようなものである。しかし、単なる意見の総和というわけではない。みんなが全体の利益を考えて行動を起こしたときに自然と導かれる最適解であるとされおり、社会全体を考えた時に最も効果的な解となる。みなが同じ方向を向き、各々が全体を考えて行動を起こすと自然と最適解が生まれ、効果的な一手として社会に反映されるという考えは確かにその通りだなと思う。

現代版の一般意思

 しかし、現代は価値観は多様化しており、同じ国の中にいても触れる情報は個人でも違う。みんなが同じ方向を向いて熟議し、全体の利益を考えて行動を起こすことは不可能に近い。そこで著者は一般意思を現代版にグレードアップさせることを提案している。それがネットを通じたデジタルデータの活用である。

 Googleでは検索する際にキーワードを打ち込むと、検索候補もでてくる。私達が何に関心があるか、データを集積してマーケットにも利用している。このようにネットの世界には私達の意思がデータとして保管されている。価値観が多様化している世界でも、ネットにある膨大なデータを集めれば、現代版の一般意思になりうるのではないかというアイデアが今回の肝となっている。確かに、検索履歴だけでなく、位置情報からは良く使われいる道や公共施設などがわかるため、そういったデータを活用すればどこにどんな力を注げばいいのかもわかるはずだ。

 しかも、今はAIが発達してきており、膨大なデータの処理やそこから有効な案を提案してもらうなどすればさらに最適解が生まれるはずだ。この考えは画期的で本当に面白いと思う。

一般意思の考えを実生活に活かすには?

 個人の利益ではなく、全体の利益を最大化させる一般意思について紹介してきたが、このような考えを私達の生活に活かせないか仕事、人間関係、お金の3視点で考えてみた。

仕事

  私は医療従事者として働いている。チーム医療としての最適解は患者へ良い治療効果を提供することだ。主に私は検査に携わる仕事をしているが、ここで私が患者のメリットを考えると疑わしい疾患の可能性を提示し、治療開始の手助けをすることだ。医療の世界でも何か卓越した個の力を患者を救っているわけではなく多職種の連携が一つの組織となって、医療を提供している。これは一般意思似も通ずるとことがある。

 また、技術的な面でもAIが発達しているおかげで、膨大な画像データをもとに内視鏡検査や画像診断の領域ではより集合知を利用してより正確な医療を提供できるようになっている。

 医療の世界にも限らず、一般的な会社でも目標や理念が存在しており、それを実現するために多くの人が働いている。自分がやりたくないと思っている仕事でも全体をみれば必要な仕事である可能性もある。一般意思の考えを通して全体利益を考えることができるようになれば、新しいモチベーションや高い評価を得られる可能性が高まると思う。

 フリーランスで働く人は、組織には属していないかもしれないが、自分の仕事の成果を考えた時には必ずどう社会に自分の仕事が役立つか、自分が携わるプロジェクトにどう自分の力が生かされているのかを考える時が必要であると思う。一般意思という考えから全体像をみるというのは、個人化が進んだ今の社会では重要なことのように思う。

人間関係

 多様性の時代になり、個人がどういった趣味嗜好を持っていようがそれは尊重すべきであるという風潮がある。私もその考えには賛成だ。人それぞれ好きなものがあって楽しく暮らせば、それでいいと思う。しかし、実際には私達はどこかの国の住人で何かしらの組織に属している。犯罪を犯せば捕まるし、生きていくには自分が住んでいる場所で消費活動を行うことになる。いくら個人の考えが尊重される時代とはいえ、組織を運営していくには多くの人にとってちょうどいいルールが必要になる。政治的な規模になると上記に示した通り、デジタルデータを利用した世界が有効かもしれない。

 私達の生活レベルに落とすと、相手への些細な気遣いが心地よい組織へとつながる。完全に一人で生きていける人はいないため、自分の感情と行動を切り離して全体の利益を考える行動を選択肢に入れるだけでも客観的な判断ができるようになり、人間関係にも良い影響が出るのではないかと思う。

お金

 日本は特に少子高齢化で自分の未来は自分で守るということで、老後のための貯金に目を向ける人は多いと思う。自分のその一人だ。自分の貯金が貯まっていくことに喜びを感じている。

 しかし、老後にお金があったとしてもそのお金を使う商品やサービスが提供してくれる労働者がいなかったら意味がない。日本の労働者はこの先必ず減っていく。全体の利益を考えた時には自分の貯金額だけでなく、今度の生産性を確保していくことにも目を向ける必要がある。自分の老後も不安なのに家族なんか作れないと最近まで思っていたが、お金というものに縛られて家族をもつという選択肢を潰しすぎていた気もする。

 家族を作らないにしても、今後の日本が衰退していかないように子供を守るために税金を払っているんだという全体を考える思考になれば、税金高すぎだろというイライラは多少収まるかもしれない。

 一般意思の概念のおかげで、自分のことしか考えれていないことに気づいた。

 

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