世界の見え方を変える方法

仕事

 具体と抽象の2軸で物事を捉えられると思考のレベルが上がる。自分の思考法のレベルアップをするために良書を紹介したいと思う。「具体・抽象トレーニング 細谷功」である。

 具体と抽象の変換が上手くいっていないことがコミュニケーションのエラーに繋がることがある。相手に具体的に細かく作業を注文しすげると、要するにこういうこと?もう少しまとめて(抽象化)と言われることもあれば、一言だけ指示を出すともっと具体的にと言われることもある。こういった具体と抽象の変換の仕方やそもそもこういったトレーニングがなぜ必要なのか、そもそも抽象と具体とは何かを著書の内容から紹介していこうと思う。

なぜ今、具体と抽象のトレーニングが必要なのか

 AIが発達していきている現代では、純粋な知識量で優位に立とうとしてもなかなか難しい。医者などの専門知識を活用して働くフィールドでも、AIの進出は目覚ましい。そこで単純な知識ではなくそこから共通点を見出し、抽象的な概念を提案してより効率的な案や画期的な解決策を見出す人がこの世の中で活躍していくことが出来る。また、抽象的な考えを持てるようになった後には、周りの人が行動に移せるように具体的な案に落とし込み行動を起こしていく必要がある。

 抽象と具体を行き来する力は今まさに、身に着けおくべき力なのである。実際に仕事でミスを起こした事例を振りかえると共通点としては、寝不足であったり、人手不足の日であったりとミスの原因になる共通点が見つかることがある。人間関係の失敗でも相手に対する態度を反省する場面を思い起こすと、相手に勝手に期待していたことが共通点として自分の場合は見つかった。一歩引いて具体的な失敗例を抽象化して高次の原因を探ると思わぬ発見があったりする。具体と抽象を理解することは日常生活においてもかなり役立つ。

抽象化とは

 抽象化とは情報の自由度を上げることであると著書の中では紹介されている。人と鳥とカエルはそれぞれ哺乳類、鳥類、両生類を分類することができるが一言でいうと3つとも生物である。これがまさに抽象化で抽象化は選択肢を広げることができ、より多くの対象に対して当てはまる概念となる。

 また、抽象化とは目的があって初めて機能するものであり、目的に沿って情報を切り取ることともいえる。アジア人に対する調査を行うならアジア人がそのゴールの中での一番の大元でそこからさらに細分化していく。中国、韓国、日本、各国の中でもさらに細分化することが出来る。目的やゴールを決定する際には抽象化のテクニックが活用できる。

 また、抽象化は人によって切り取り方が違うため話をすり合わせないとイメージしているものに相違が生まれる可能性が高い。逆に具体化はある一例を説明するために利用するため、そういった相違は生まれにくい。自分の中で仕事ができる人とはこういった人だと理想像を掲げていても、他の人にとっての仕事ができる理想像は違っている。抽象化は物事を広くとらえるのには便利だがその物事の切り取り方は各々に依存しているため、自分だけの尺度でとらえるのはかなり危険なことであるともいえる。

 私は検査に携わる仕事をしているが、患者のためにより良い検査を行うという抽象的なゴールを設定している。仕事場の人との共通の目標としてはよいが、そこから具体的に行動に移すためには具体的な計画が必要になってくる。

 抽象的なものは自由度があるため人によって定義しているものが違う、見えているものがそもそも違う。その人の視点で相手を馬鹿にしてしまうことがあるが、この前提を理解していないと周囲にアピールしているようなものなので、気を付けた方が良い。

具体化とは

 具体化とはずばり一言でいうと、行動に移すために必要なものである。新年の目標に運動をするというものを掲げるとすると、そこから何の運動を何時間、どこでどの強度でいつするのかと条件を付けくわえていけば、より目標が具体化させて行動に移しやすくなる。また、具体化は自由度を狭めてより対象にコミットするために用いられるものであるといえる。

 著書の中では具体と抽象の繋がりを川の流れに例えており、抽象が上流で具体が下流である。上流の方が水の量が多く、そこに転がっている石も大きい。下流に下ってくると水の量も減り石も小さく丸くなっている。下流に下るほど対象物が狭まっていくイメージがしやすいと思う。また、理解のしやすさも水が下流へと自然に流れていくように、人の頭も具体例を好み、実際理解しやすい。抽象化したものを理解するのは頭を使う。

 具体的に日常生活で具体化を使うしたら、組織でのゴールが定まっている場合は具体化を用いてそのゴールまでの最短ルートを条件を出して考えるとよい。また、具体化することによって万人が理解できる情報まで落とし込むことができるため、大人数で作業をする場合にも具体化が活きてくる。

アナロジー

 具体と抽象に加えて、著書の中で紹介されているのがアナロジーという考え方だ。訳すと類推という意味である。複数の対象に対して共通点を見出して新しい考え方や突破口を見つけだす思考法である。著書の中で紹介されている例で印象的だったものを紹介する。

「成功」の対義語は何か?と聞かれると多くの人は「失敗」と答えると思う。しかしどちらも行動している点では同じで物事に真剣に向き合った結果の違いである。成功と失敗の間にあるものは「何もしない事」この真ん中地点で半分にすると「成功」と「失敗」は重なりあい、対局には「何もしないこと」がくる。一見、成功と失敗は対局にあるものだと感じられるが行動に移したという共通点があり、何もしない事が対極にくる。

 他にも愛と憎しみも同じようなもので、2つの対極にくるのは無関心。物事の共通点を見つけるだけで見え方がガラッと変わる。このようなテクニックを日常生活に活かすことができれば多面的に物事を捉えることができ、世の中の見え方が変わっていくはずだ。

まとめ

 具体と抽象は使い分けが重要で、それぞれの特性にも注目すべきである。また、相手が具体と抽象どちらを求めているかも判断しつつ日常生活に応用していくことだ必要である。自分の場合は抽象化が苦手である。物事の具体例から前提条件を示す帰納法を意識しながら物事の本質を捉えられるように努力を続けていきたい。また、今回紹介した著書では具体的な例を挙げながら、具体と抽象をわかりやすく解説してくれている。ぜひ、手に取ってみてほしい。

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