失敗はみんな嫌いだろう。自分も仕事で失敗するとへこんでしまうときがある。しかし、失敗は自分が成長するための大事な要素であるともいえる。社会人になって数年経ち、仕事にも慣れてきたときに失敗を連発し、夜遅くまで報告書を書き、気分が沈んだ時に出会った1冊について解説する。
失敗の科学 マシューサイドのおかげで、失敗に対する意識が変わった。
本の中では、実例をもとに失敗への向き合い方を紹介してくれている。失敗への対処法を学びながら日常生活への活かし方も考えていく。
①失敗に対する意識
航空機関は失敗への意識が他の業界に比べて抜きんでている。人命を預かっているというのもあるが、組織としての仕組みが図晴らしい。ブラックボックスは有名であると思う。機長や副機長の会話が録音され、事故が起きた際には回収され事故の原因究明に利用される。
他にもミスをした際には10日以内に報告を行えば、罰則がないなど、ミスを隠すという悪い文化が存在しない。むしろそのミスのデータを利用し、パイロットがミスしやすい原因を排除するために長年成長してきた業界である。
逆に、医療業界では医療ミスによる患者の死亡事故は現代でも多い。技術的な問題、予測不可能で回避不可能は事象が起きたなど、様々な言い逃れでミスからの成長の機会を逃してきた業界である。事実を歪曲してしまう、悪しき文化が根付いていたことにより、多くの患者が犠牲になってきた。
具体的な医療業界の見直されるべき、ミスの事例はぜひ、本を手にとって読んでみてほしい。
失敗をフィードバックをするかしないかで、何万もの命が救われるか犠牲になり続けるかの分かれ道になる。自分もミスした際に報告書を書くことが嫌だったが、自分のミスから組織がよりよくなる可能性があると意識するようになり、ミスに対して良い意味で過剰反応しなくなった。
また、組織で仕事をしている身としては、もっとミスを報告しやすい環境を整えていくべきだとも感じた。ミスを報告することによって逆に感謝されるような、そのミスによってピットフォールをあぶりだすことができるんだというような意識改革が重要である。
②認知的不協和によって失敗から抜け出せない
認知的不協和はかなり強力なバイアスで、意識していないど抜け出すのは難しい。認知的不協和のエピソードは本の中で紹介されているが、一番印象に残った実験について解説する。
実験参加者を2つのグループにわけ、どちらのグループにも退屈で長い演説を聞いてもらう。片方には報酬としてお金をあげて、もう片方のグループには報酬はなし。その後、2つのグループに演説の評価をしてもらった。どちらのグループを演説に対して高評価をつけただろうか。
答えはなんと、報酬なしのグループであった。お金をもらったグループは報酬のために、演説をきいたんだという後付けの理由ができたが、無報酬のグループにはその演説を正当化する理由はない。その演説自体が良いものだったという後付けの理由によって退屈な演説に意味を見出しているということである。認知的不協和を自分の解釈で解消しようとしている。
認知的不協和は日常生活にも潜んでいる。自分の場合は、客観的にみて、あまり良くないパートナーとお付き合いしているとき、周りからはやめておけと言われるが、この子の良さは自分にしかわからないんだと、自分を正当化して認知的不協和にはまっていた時期があった。
この認知的不協和は、自分の過ちに気づくチャンスを無くしてしまう。自分の結論が第三者からみて明らかに間違っているとしてもどこからともなく、後付けの理由を持ち出して自分を正当化してしまう。失敗から抜け出せないという状態になってしまう。
③正しい答えを早く見つけるには失敗するのが吉
われわれは最適解を見つけるために熟考し、なかなか行動に移せないことが多い。著書の中では早く正しい選択を導き出すには早く失敗するのが吉だと解説している。
ランダムに並んだ3つの数字の規則性を答えるゲームがある。例えば「2、4、8」という数字がならんでいるとする。この数字の規則性をみつけ、続く数字を3つ答えるために、何度でも質問をしてよいという条件ならとにかく、質問しまくることによって、徐々に正解が絞られていき答えをみつけることができる。
生物界でも同じような現象がおきる。長い年月をかけて生物は進化してきた。周りの環境に合わせてまるで神の一手のような進化を起こして種は存続してきたと思われがちだが、実際には何パターンもの進化がおき、偶然環境に適応した形質をもつ生物が生き延びてきただけである。何パターンもの失敗は自然淘汰によって滅びてたにすぎない。
自分たちの生活に結び付けて考えると、何か成功をおさめたいなら、とにかく失敗して最適解を自分なりに捜していくしかない。なにも手を付けず、頭の中で正解を吟味し続けるのは逆に遠回りである。
まとめ
失敗に対する意識、陥りがちなバイアス、失敗が正解を導いてくれることを解説してきた。少しでも失敗は怖いものではないと考えられるようになってもらえればうれしい。