今回は説得のスキルを上げるために「影響力の武器 実践編」を紹介する。この本では相手を説得するための具体的なスキルが60個にわたって端的にまとめられている。人間の心理をもとにわかりやすく解説してくれているため、読んだ次の日からすぐに実行に移せる。本書の中でとくに印象にのこった3点を紹介したいと思う。残りの57個はぜひ手に取って確かめてほしい。
恩恵を受けたいならまず先に手助けを
著書のなかで紹介されている研究の内容は、ホテル利用客が環境資源の再利用に協力してくれた場合、ホテル側が環境団体に寄付するという条件で、資源の再利用に協力してくれる人は増えるのかというものだった。対象群としては、単純に資源の再利用を促すだけというものだった。結果に差はあったのかというと、なんと協力した人数に明らかな差がみられなかった。
そこで研究グループは、「我々はお客様の代わりに環境団体に寄付を行っています。資源の再利用に協力してください。」と先に寄付を行っているという条件に変えてみた。すると資源の再利用に参加してくれるホテル利用客は大幅に増加した。「○○をしてくれたら、~をしてあげる」という頼み方にはほとんど効果はないということだ。
しかし、私達は研究チームが条件を変える前の頼み方をしがちだと思う。誰に助けてもらうのかではなく、まず自分が相手を助けてあげてそれから相談事をするほうが圧倒的に得であるということが。しかも利他的な行動は自分の時間感覚にも余裕を持たせてくれる。まさに一石二鳥。
自分も仕事が忙しい時は、5分程度は他の人の手伝いをするようにしている。心にも余裕が生まれ本当に自分が困っているとき、相手に頼みやすい。これは日ごろからかなり効果を感じている。皆さんにもぜひ意識しておいてほしいポイントだ。
目標達成のコツ
今月・今年はこれをするぞ!と目標を立てる人は多いと思う。目標達成率を簡単に上げる方法がある。それは、目標を紙に書きだすこと。著書の中で「積極的コミットメント」として紹介されている。自分でというのがポイントで他者から与えられた目標ではなく、自分で書くという行為が大事らしい。
人間は一貫性を保ちたがる性質があるため、一度自分で書いたも目標を達成するような心理作用が働くようだ。また、一貫性を利用したものとして、誰かに約束した行動を守らせたいときは相手に約束の内容や具体的な達成方法を自分で書かせると、約束した内容を守ってくれやすくなる。
お店を経営している人は予約の受付をした際には客自身に時間や日時、署名をしてもらった方が予約をすっぽかされる可能性を下げることができる。こういった自分で書かせる、自分で何をするべきなのかを口に出してもらうというコミットメントは子育てにも応用できそうだ。大人があれしろこれしろと口を出すより、今何をするべきなのか一緒に考えてあげるというようなスタンスのほうがいいのかもしれない。
少し前に話題になった大谷選手の目標達成シートも積極的なコミットメンとの一つだといえる。目標達成までの細かい道のりも記入できる点も素晴らしかったと思う。
私は、スマホの待ち受けは自分の行動の指針となる人生の価値観を記入した紙にしている。よく目にするし、これも今振り返ると積極的なコミットメントになっていたと思うし、実際に自分の価値観に沿う行動を起こす回数が増えたと思う。目標達成のために積極的なコミットメントを活用してほしい。
短所の見せ方
人間だれしも短所があって、その人を構成する一つなのだから無理に抑制する必要はないと思う。しかし、人生において自分をアピールしたいときはあると思う。私の短所を認めてくれない人なんかこっちから願い下げという考えもあるかもしれないが、今回は戦略的に人生をいきるための本を解説しているため、短所の戦略的な見せ方を紹介する。
短所の部分に関連する長所を示すと、好印象を与えることができると著書のなかで解説されている。自分の場合は「かなり雑なところがあるが、その分人のミスにも寛容だ。」といった感じだろうか。このように自分の短所を隠すのではなく、いかにその短所をアレンジしてあげるかということだ。自分の性格は結局使い方次第ということだろうか。
また、この短所の捉えなおしは人の評価にもうまく使えるのではないだろうか。職場で口うるさい上司がいるとしたら、面倒見がいい、責任感がある、といったような長所に捉えなおしてあげると好きになれない人でも今よりフラットに付き合えるようになるかもしれない。
まとめ
「影響力の武器 実践編」で気になったところを紹介してきたが、名前の通り実践で使えるテクニックが数多く紹介されており、対人スキルが本を読むだけで何倍もあがる。おすすめの1冊だ。